「Boy friend」 ハイ・ファイ・セット(1985年)

蒸し返すのも気が進まないのだけれど、ハイファイセットの、あの生活に困って「ハイファイ窃盗」(どこぞのスポーツ紙の見出しがこうであったらしい)を働いてしまったメンバーは今どうしているのだろう。
あんなにもあんなにもあんなにも珠玉の作品を数々のこしていながら、たった一度の気の迷いのせいで、何とも後味の悪い幕切れを迎えてしまったハイファイセット……。
「卒業写真」や「スカイレストラン」等、ユーミンがらみの楽曲が通常はまず思い浮かぶところだろうが、ウチとしてはあえてそこはごっそり外してハイファイセットを愛でたいのだ。
ごっそり外したら何も残らないのでは……?と思ってはならない。残った所にこそ彼らの豊饒の世界があるのだと言い切っておこう。
特に杉真理作品との相性の良さが際立っていると思うのだが、いかんせん歌唱者(山本潤子)の声質や力量に合わせた難易度の高い楽曲が多く、カラオケで気楽に歌ったり出来ないのが災いするのか、時とともにどんどん埋もれていくのが口惜しい限りだ。
この「Boy friend」などその最たるもので、よしんばカラオケに入ったところで素人じゃまず歌えまい。
しかしこの、少女ではなくすっかり成熟した女が言う「ボーイフレンド」というニュアンスが含むあれやこれやが、適温かつ美しく切り取られた歌詞とあいまって、心の中に忘れがたい光景を残す佳曲なのだ。
「素直になりたい」もいいですが、あっちはぎりぎりカラオケにも入っているので心配いらないんです、というわけで「Boy friend」。とりあえず呑み屋に行かれた際など有線にリクエストしたりなんかしていただけないものでしょうか。
はい、あなたにお願いしているのです……!