「僕等のダイアリー」 H2O(1981年)

この曲を取り上げたからと言って、H2Oについて語りたいのかと言うとそんなわけはなくてですね。
たとえそこにオダギリジョーが100人いたとしても、たった1人の来生たかおの前にはあえなく負けてしまうのではないか……ということを、ワールド・ワイド・ウェブの中心で高らかに叫んでみたくなったのでした。
今の私にとってたかおはそのぐらいエロい存在です。
彼の創作の全盛期であった80年代、まだバリバリの処女であった私にとって彼の作品は「良さは認めるものの、若干甘過ぎて物足りない」という印象でした。
やはり子供にとってはああしたコンパクトにまとまった職人芸より、「俺のこわれた蛇口か〜ら〜♪」的、わかりやすく刺激の強いものの方がよりエロく、かっこよく思えたものなのです。
そうした刺激の強い、ロックな皆さんを「街道沿いのラーメン激戦区」とすれば、たかおはいわば「ひとり亀屋万年堂」のようなものではなかったかと思います。
深夜2時に、上半身裸になってこれみよがしに麺をざっぱざっぱと茹でてみせるワイルドな野郎(TATTOOあり)と、早朝4時ぐらいに品のいい和洋菓子をひとり黙々と量産し続けるたかお(こなきじじい似)とを並べた場合、ガキの目はどうしたって前者に吸い寄せられてしまいます。
時が流れ、宵っ張りの楽しさにもすっかり飽きた私に、たかおがあの頃せっせとこさえたお菓子のクオリティの高さが、まるで甘い復讐ででもあるかのように今さら沁みてまいります。
何を持って来てもよかったんです。「楽園のDoor」でも、「スローモーション」でもいい。
代表曲と言うなら「シルエット・ロマンス」ということになるんでしょうか。
でもあえてH2O。TV版「翔んだカップル」のエンディングテーマであったこの曲は、童貞のしょっぱい感じを見事にさらった姉・えつこさんの歌詞といい、ある程度手くせで書いても75点は取ってしまうたかおの職人芸が炸裂したメロディーといい、珠玉中の珠玉、出来ることならこの歌もセルフカヴァーしてもらってたかおのあの声で聴いてみたいもの。
この「シナプス謡曲」ではかねがね、「狩人と言えば『あずさ2号』ではなく『コスモス街道』だろ!運動」を繰り広げてきましたが、ここに

「H2Oと言えば『思い出がいっぱい』ではなく『僕等のダイアリー』だろ!運動」

も加わったことを力強く宣言したいと思います。
毎度毎度つくづく孤独な闘いです。